企業の持続的な成長を支える「コア人材」。この言葉は多くのビジネスパーソンの間で使われていますが、具体的にどのような人材を指すのでしょうか。本記事では、コア人材の定義や特徴、育成方法までを詳しく解説します。人材育成の戦略立案に役立つ情報をお届けします。
1. コア人材とは?企業の根幹を支える重要人材
コア人材とは、企業の中核を担い、組織の成長や変革を推進する重要な人材のことを指します。単なる業務遂行能力だけでなく、企業の理念や価値観を体現し、他の社員に良い影響を与える存在です。
1-2. コア人材の定義
コア人材とは、企業の中核を担い、事業を支える重要な人材を指します。具体的には、専門的な知識やスキル、経験を活かして企業の成長に寄与し、経営視点を持つ人材です。変化に柔軟に対応しイノベーションを生み出せることや、長期的な視点で企業の成長に貢献できることも重要な要素となります。コア人材は企業によって定義が異なりますが、「会社の将来を担う中核となる人材」という点では共通しています。
2. フロー人材との比較:何が違うのか

コア人材を理解するためには、対比概念である「フロー人材」との違いを知ることが重要です。
2-1. フロー人材の特徴
フロー人材はパートタイムや契約社員など流動的な立場で働く人材を指します。専門スキルは持っていますが、会社特有の文化や知識への依存度は低く、労働市場で流動性が高いため必要に応じて採用・配置転換されることが特徴です。フロー人材も企業にとって重要ですが、コア人材のように企業の中核を担うというよりは、特定の業務や機能を担当する役割が中心となります。
3. コア人材の特徴:5つの重要な要素

コア人材には、以下のような特徴があります。
3-1. 高い当事者意識と責任感
コア人材は与えられた仕事を「やらされている」という意識ではなく、自らの責任として捉え、主体的に取り組みます。失敗や困難な状況に直面しても、責任転嫁せず、解決策を模索する姿勢を持っています。このような当事者意識は、周囲のメンバーにも好影響を与え、組織全体の責任感を高めることにつながります。
3-2. 変化への適応力と学習意欲
ビジネス環境が急速に変化する中、コア人材は新しい知識やスキルを継続的に学び、変化に適応する能力を持っています。自己成長への意欲が高く、常に学習し続ける姿勢があります。この学習意欲は、組織の変革や革新を促進する原動力となり、企業の競争力維持に大きく貢献します。
3-3. 組織全体を見渡す視野の広さ
自分の担当領域だけでなく、組織全体の目標や課題を理解し、全体最適の視点で行動できることもコア人材の特徴です。部門間の壁を越えた連携や調整も行えるため、組織の一体感を生み出すことができます。このような視野の広さは、サイロ化を防ぎ、組織全体の効率向上に寄与します。
3-4. 企業文化や価値観の体現者
コア人材は企業の理念や価値観を深く理解し、日々の行動で体現しています。そのため、社内の模範となり、企業文化の継承や発展に大きく貢献します。特に新入社員や中途入社の社員にとって、コア人材の言動は企業文化を理解する上での重要な手がかりとなります。
3-5. 周囲への影響力とリーダーシップ
役職に関わらず、特定の分野において高い専門性や人間性によって周囲から信頼され、影響力を持っていることもコア人材の特徴です。公式・非公式な場面でリーダーシップを発揮し、チームや組織の成果向上に貢献します。このリーダーシップは、必ずしも上から指示するタイプではなく、共感や信頼を基盤とした影響力であることが多いです。
4. 企業フェーズによってコア人材の定義が異なる

企業の成長段階によって、必要とされるコア人材の特性や役割は変化します。
4-1. スタートアップ期のコア人材
創業初期には、多様な業務に対応できる柔軟性と、不確実性の高い環境でも粘り強く取り組める忍耐力が求められます。また、少ないリソースで最大限の成果を出す創意工夫や、創業者のビジョンに共感し実現に向けて行動できる姿勢も重要です。スタートアップ期のコア人材は、「何でも屋」的な役割を果たしながらも、企業の方向性を定める重要な存在です。
4-2. 成長期のコア人材
事業が軌道に乗り始めた成長期には、組織の拡大に伴う管理能力や事業拡大のための戦略立案能力が重要になります。また、新しく加わるメンバーの育成能力や、企業文化の形成と浸透を促進できる力も求められます。成長期のコア人材は、組織の拡大と質の維持という二つの課題に同時に取り組むことが求められるのです。
4-3. 成熟期のコア人材
事業が安定してきた成熟期には、新規事業の創出や既存事業の革新を推進できる能力が重要です。また、グローバル展開などの複雑な取り組みをリードできる力や、次世代リーダーの育成に貢献できる能力、さらには環境変化に対応した組織変革を推進できる力も求められます。成熟期のコア人材は、現状維持ではなく継続的な変革を主導する役割を担います。
5. コア人材の定義の例
各企業では、自社の事業特性や企業文化に合わせてコア人材を定義しています。ここでは、一般的に考えられる業種別の定義例を紹介します。
5-1. 製造業の例
製造業では、「技術の継承と革新を両立し、品質向上と効率化を推進できる人材」をコア人材と定義することが考えられます。生産技術に精通し製造プロセスの改善を主導できることや、技術伝承の仕組みづくりができること、品質管理と生産性向上のバランスを取りながら現場をリードできることなどが重要視されるでしょう。特に伝統的な技術を持つ製造業では、技術継承と革新のバランスを取れる人材がコア人材として重要な役割を果たします。
5-2. IT・サービス業の例
IT・サービス業では、「顧客価値を創造し、技術トレンドを先取りできる人材」がコア人材として重要視されることが多いでしょう。顧客の業務課題を深く理解し最適なソリューションを提案できることや、新技術の可能性を見極めてサービス開発に活かせること、多様な専門性を持つメンバーをプロジェクトでまとめられることなどが求められます。変化の速いIT業界では、技術力と顧客理解の両方を兼ね備えた人材がコア人材となります。
5-3. 小売・流通業の例
小売・流通業では、「顧客体験を重視し、変化する消費者ニーズに対応できる人材」がコア人材として求められるでしょう。消費者インサイトを捉え売場づくりや品揃えに活かせることや、オンラインとオフラインの融合を推進できること、地域特性や店舗特性に合わせた運営戦略を立案・実行できることなどが重要です。顧客との接点が多い小売業では、顧客視点と経営視点の両方を持ち合わせた人材がコア人材として活躍します。
6. コア人材育成のステップ:計画的なアプローチ

コア人材の育成は、計画的かつ継続的に行う必要があります。以下に段階的なステップを紹介します。
6-1. コア人材の明確な定義と選定基準の確立
まずは自社におけるコア人材の定義を明確にし、選定基準を確立します。経営理念や中長期計画を踏まえた人材像の策定が基本となりますが、業績だけでなく行動特性や価値観も含めた多面的な評価基準を設定することが重要です。また、現在の役割だけでなく将来的な可能性も考慮した選定プロセスを確立することで、潜在能力の高い人材を見出すことができます。
6-2. 潜在的なコア人材の発掘と選定
定義と基準に基づき、組織内から潜在的なコア人材を発掘します。上司による推薦だけでなく多角的な視点での評価が必要です。また、通常業務とは異なるプロジェクトでの活躍機会を提供し観察することや、定期的な面談や自己申告制度を通じたキャリア志向の把握も有効です。多様な視点からの評価により、表面的な成果だけでは見えない潜在能力や適性を発見することができます。
6-3. 個別育成計画の策定と実行
選定された人材ごとに、個別の育成計画を策定します。強みをさらに伸ばし弱みを補強するための具体的アクションを設定し、OJTと研修を組み合わせた体系的な育成プログラムを構築します。また、定期的な進捗確認と計画の調整も重要です。画一的なプログラムではなく、個人の特性や成長段階に合わせたカスタマイズされた育成計画が効果的です。
6-4. 挑戦的な機会の提供
成長には挑戦が不可欠です。コア人材候補には通常業務よりも難易度の高い責任ある役割を付与したり、新規プロジェクトや改革活動のリーダー役を経験させたりすることが有効です。また、異なる部門や海外拠点での勤務経験も視野を広げる良い機会となります。適度な困難さを伴う挑戦は、成長を加速させる重要な要素です。
6-5. 継続的なフィードバックとサポート
育成プロセスを通じて、継続的なフィードバックとサポートを提供することが重要です。定期的な1on1ミーティングでの進捗確認と課題共有や、メンター制度やコーチングの活用、経営層との直接対話の機会提供などが効果的です。成長のプロセスでは困難に直面することも多いため、適切なサポート体制が重要となります。
7. コア人材の育成方法:具体的な7つの施策
コア人材を効果的に育成するための具体的な施策を紹介します。
7-1. 選抜型研修プログラムの実施
コア人材候補を選抜し、集中的に育成する研修プログラムを実施することは効果的です。経営幹部による直接指導や、ケーススタディやビジネスシミュレーションを通じた実践的学習、外部の一流講師による専門的な知識・スキルの習得などを組み込むことで、短期間で集中的な成長を促すことができます。選抜されることによる動機づけ効果も期待できます。
7-2. クロスファンクショナルな経験の提供
異なる部門や機能を経験させることで、視野を広げることも重要です。計画的なジョブローテーションや、複数の部門が関わるプロジェクトへの参画、営業・企画・管理など異なる機能を経験させるキャリアパスの設計などが有効です。多様な経験は視野を広げるだけでなく、組織全体を俯瞰する力やネットワーク構築にも役立ちます。
7-3. メンターシップの活用
経験豊富な上級社員がメンターとなり、成長をサポートする仕組みも効果的です。定期的な対話を通じた知識や経験の共有や、キャリア開発に関するアドバイスの提供、組織内ネットワーク構築のサポートなどが行われます。形式的なプログラムではなく、本音で語り合える関係性の構築が重要です。
7-4. アクションラーニングの導入
実際の経営課題に取り組ませることで、実践的な能力を養うアクションラーニングも有効です。小チームで実際の経営課題に取り組み解決策を経営層に提案することや、失敗からも学ぶ文化の醸成、結果だけでなくプロセスや思考法も重視した評価などがポイントとなります。実際の課題に取り組むことで、座学では得られない実践的な学びが得られます。
7-5. 外部知見7-の積極的な導入
社内だけでなく、外部の知見も積極的に取り入れることが重要です。大学院や専門機関での学びの機会提供や、業界団体や異業種交流会への参加促進、海外研修や先進企業への視察などが効果的です。外部の視点に触れることで、社内常識にとらわれない新しい発想や視点を獲得することができます。
7-6. 早期からの経営参画機会の提供
若手のうちから経営的な視点を養う機会を提供することも重要です。経営会議のオブザーバー参加や、中期経営計画の策定プロセスへの参画、役員との直接対話セッションなどが有効です。経営層の思考プロセスや意思決定に触れることで、経営視点の早期獲得につながります。
7-7. デジタルツールを活用した継続的学習支援
テクノロジーを活用し、効率的かつ効果的な学習環境を整備することも重要です。オンライン学習プラットフォームの導入や、マイクロラーニングによる忙しい中でも継続できる学習環境の提供、データに基づいた個人別の学習推奨と進捗管理などが効果的です。多忙なビジネスパーソンが継続的に学習できる環境づくりがポイントとなります。
8. まとめ:コア人材育成は企業の未来への投資
コア人材の育成は、単なる人材開発プログラムではなく、企業の持続的成長のための戦略的投資です。明確な定義と選定基準を設け、計画的かつ継続的に育成を進めることで、企業の将来を担う真のコア人材を輩出することができます。
企業のフェーズや業界特性に合わせてコア人材の定義を見直し、時代の変化に対応した育成プログラムを構築することも重要です。経営層のコミットメントと、育成対象者自身の主体的な取り組みがあってこそ、コア人材育成は成功します。
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