デジタル人材とは?定義・必要スキル・育成方法を解説

 

近年、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中、デジタル人材の確保・育成が経営課題として大きく注目されています。しかし、「デジタル人材とは具体的にどのような人材を指すのか」「どのようなスキルが必要なのか」という点について、明確なイメージを持てていない企業も少なくありません。

本記事では、デジタル人材の定義から、必要なスキル、育成方法まで、人事担当者や経営層の方々に向けて解説していきます。

1. デジタル人材の定義

経済産業省は、デジタル人材を以下のように定義しています。

デジタル技術の活用において、重要な鍵を握るのは、最先端の技術を理解し、活用する能力を持った人材である。本調査では、このような人材を、これまで議論されてきた「IT人材」と区別して「デジタル人材」と呼ぶこととする。

引用:経済産業省_デジタル人材政策に関する調査_https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000248.pdf

つまり、デジタル人材とは、デジタル技術を活用して企業や社会に新たな価値を提供し、ビジネスの課題解決や革新に貢献できる人材を指します。具体的には以下のような要素を備えた人材を指します。

デジタル人材の要素
  • デジタル技術の特性を理解し、業務への適用可能性を判断できる
  • データを活用した意思決定ができる
  • デジタル技術を用いたビジネスモデルを構想できる
  • 組織のデジタル変革を推進できる

重要なのは、単なる技術者ではなく、ビジネスとテクノロジーの両方を理解し、組織の変革を推進できる人材であるという点です。

2. デジタル人材に必要なスキル

デジタル人材には、大きく分けて以下の3つのスキルセットが求められます。

テクニカルスキル
  • クラウドサービスの活用能力
  • データ分析ツールの操作スキル
  • プログラミングの基礎知識
  • AIやIoTなどの先端技術の理解
ビジネススキル
  • データに基づく課題発見力
  • プロジェクトマネジメント能力
  • ビジネスモデルの設計・構築力
  • ROI(投資対効果)の分析力
ヒューマンスキル
  • 部門を超えたコミュニケーション力
  • 変革推進力とリーダーシップ
  • アジャイル思考
  • 論理的思考力

3. デジタル人材の種類と役割

ここではデジタル人材の種類とそれぞれの役割についてご紹介します。

経済産業省「デジタルスキル標準」によると、デジタル人材は、その専門性や役割によって以下のように分類されます。

3-1. ビジネスアーキテクト

DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材。

3-2. データサイエンティスト

DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材。

3-3. サイバーセキュリティ

業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材。

3-4. ソフトウェアエンジニア

DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材。

3-5. デザイナー

ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材。

DXを推進する人材は、他の人材類型との繋がりを積極的に構築し、他類型の巻き込みや手助けを行うことが必要です。また、社内外を問わず、適切な人材を積極的に探索することも重要です。

参考:経済産業省「デジタルスキル標準」_https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221221002/20221221002-1.pdf

4. デジタル人材の育成方法

以下のような手法を組み合わせることでデジタル人材の育成が可能です。育成目的や対象者のレベルに応じて適切に選択することが重要です。

4-1. 研修プログラム

デジタル人材の育成において、研修プログラムは体系的なスキル習得の基盤となります。効果的な研修は、基礎と専門の2段階で構成することが望ましいとされています。基礎研修では、デジタルリテラシーやクラウドサービスの基本的な活用方法、データ分析ツールの操作など、デジタル技術の基礎を学びます。その後の専門研修では、データ分析やデジタルマーケティング、プロジェクトマネジメントなど、職種別の専門スキルを習得します。これらの研修では、座学だけでなく、実践的なケーススタディやグループワークを取り入れることで、実務での応用力を高めることができます。

4-2. 外部研修・資格取得支援

最新のデジタルスキルを効率的に習得するためには、外部のリソースを活用することが有効です。ベンダーが提供する技術研修や専門スクールへの派遣、オンライン学習プラットフォームの活用など、様々な選択肢があります。特に、AWS認定資格やGoogle Cloud認定資格などのクラウド関連資格、データサイエンティスト検定などのデータ分析関連資格の取得を支援することで、客観的なスキル指標を設けることができます。また、資格取得に向けた学習過程で、体系的な知識習得が可能となり、実務での応用力も向上します。

4-3. OJT

実務を通じた学習(OJT)は、デジタルスキルを確実に定着させる上で効果的な手法の一つです。経験豊富なメンターのもと、基本的なタスクから開始し、徐々に責任範囲を拡大していくことで、実践的なスキルを身につけることができます。週次の進捗確認や月次の成果レビュー、四半期ごとのスキル評価を通じて、着実な成長を促進します。特に、実案件での経験は、技術的なスキルだけでなく、プロジェクトマネジメントやコミュニケーション能力の向上にも寄与します。

4-4. 自己学習支援

デジタル人材の育成において、自発的な学習を支援する環境整備は不可欠です。社内ライブラリーの設置やオンライン学習ツールの提供、技術書籍の購入補助などの学習環境の整備に加え、業務時間内での学習時間の確保も重要です。また、資格取得報奨金の支給やスキル習得に連動した評価制度の導入により、継続的な学習のモチベーションを維持することができます。自己学習支援は、個人のペースとニーズに合わせた柔軟なスキル習得を可能にし、長期的な成長を支える基盤となります。

4-5. ジョブローテーション

異なる役割や部署での経験を通じて、幅広いデジタルスキルを習得できるジョブローテーションは、総合的な人材育成に効果的です。例えば、事業部門からIT部門への異動では、システム開発の基礎理解やテクニカルスキルの向上が期待できます。逆にIT部門から事業部門への異動では、ビジネス課題の理解や実務でのデジタル活用能力が養われます。また、全社DXプロジェクトや新規事業の立ち上げなど、プロジェクト型の配置も効果的です。6ヶ月から1年程度の計画的なローテーションを実施することで、バランスの取れたデジタル人材の育成が可能となります。

5. まとめ

デジタル人材の育成は、企業の将来的な競争力を左右する重要な経営課題です。単なるデジタルツールの操作スキルだけでなく、ビジネス変革を推進できる総合的な能力を持つ人材の育成が求められています。

効果的な人材育成のためには、自社の状況や目指すべき方向性を見極めた上で、適切な育成プログラムを選択・実施することが重要です。ぜひ、自社のデジタル人材育成戦略を検討してみてください。

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