OJT(On-the-Job Training)は、職場での実務を通じてスキルや知識を習得する教育方法です。しかし、計画不足や指導方法の課題によって、成果を上げられないケースも少なくありません。本記事では、OJTの進め方について、失敗例とその対策、効果的な進行手順、育成担当者が押さえるべきポイントを解説します。
1. OJTとは
OJT(On-the-Job Training)は、職場の実務を通じて、従業員に必要なスキルや知識を習得させる教育方法です。「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」(令和3年_独立行政法人 労働政策研究・研修機構)によると、日常の業務を通じた教育訓練(OJT)を重視する企業は約9割(87.7%)に上っています。
参考:「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」_令和3年 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/press/documents/20210205.pdf
2. OJTを実施する際のよくある失敗と対処例
OJTは実務を通じた効果的な育成方法ですが、計画や指導方法が不十分だと、期待した成果を得られないことがあります。ここでは、よくあるOJTの失敗例とその対処法を詳しく解説します。
2-1. 計画性の欠如
計画性が不足すると、OJTの目的やゴールが曖昧になり、育成対象者がどのようなスキルを習得すべきかが不明瞭になります。
失敗例: 「何となく始める」ことで、具体的な学習目標が定まらず、育成対象者が迷ってしまう。
対処法: OJTを開始する前に、具体的かつ測定可能な目標を設定し、それに基づいた詳細な計画を立てる。
2-2. 育成担当者の指導時間の不足
育成担当者が多忙で指導に十分な時間を確保できない場合、育成対象者へのフォローが不足したり、育成の質が低下するケースがあります。
失敗例: 育成担当者がOJTの時間を確保できないため、OJTの進行が止まる。
対処法: OJTの実施に必要な時間を事前にスケジュールに組み込み、育成担当者の負担を軽減するためのサポート体制を構築する。
2-3. 育成担当者のスキル不足
育成担当者が指導スキルを持っていない場合、教える内容が曖昧だったり、効果的に伝わらないことがあります。これは育成対象者の学習意欲やスキル習得を妨げます。
失敗例: 育成担当者が教え方に自信がないため、指導が消極的になる。
対処法: 育成担当者向けの研修を実施し、指導スキルやフィードバックの技術を習得させる。
2-4. 形骸化したOJT
OJTが単なる業務の引き継ぎや、場当たり的な仕事の「丸投げ」になってしまうと、育成の目的が失われ、形だけのものになります。
失敗例: 「これやっといて」と業務だけを任せ、育成対象者が指導の意図を理解できないまま進む。
対処法 : OJTの各ステップ(目標設定、計画立案、実行、評価)を明確にし、進行を定期的にチェックする体制を作る。
3. OJTの進め方
OJTを効果的に進めるには、明確な手順と各ステップにおけるポイントを押さえる必要があります。ここでは、具体的なOJTの進め方を順に解説します。
3-1. OJTの目標の設定
OJTの第一歩は、育成対象者に習得させたいスキルや知識を明確にすることです。この目標が曖昧だと、育成の方向性がぶれ、効果が薄れてしまいます。
抑えるべきポイント: SMART目標(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限付き)を活用して、現実的かつ具体的な目標を設定する。
3-2. OJTの計画立案
目標を基に、実際に何を、いつ、どのように進めるかを計画します。具体的なスケジュールを立てることで、進捗状況を把握しやすくなります。
押さえるべきポイント: 週間単位でチェックポイントを設け、目標達成に向けた進捗を管理する。
3-3. 育成担当者を決める
育成対象者の特性や育成目標に合った担当者を選定することが重要です。担当者の指導力やコミュニケーション能力が育成の成果を左右します。
押さえるべきポイント: 選定基準を明確にし、担当者に対して事前に役割や期待値を共有する。
3-4. OJTの実行
OJTの実行では、以下の「Show、Tell、Do、Check」の手順を意識すると効果的です。
Show: 実際に作業を見せて手順を示す。
Tell: その作業の意図や目的を説明する。
Do: 育成対象者に作業を実際にやらせてみる。
Check: 作業結果を確認し、必要に応じて修正指導を行う。
押さえるべきポイント: 対象者が作業に慣れるまでは、こまめにフィードバックを提供する。
3-5. 評価と振り返り
OJT終了後は、育成対象者が目標を達成できたかを評価し、振り返りを行います。このステップを経ることで、次回のOJTに向けた改善点が見えてきます。
押さえるべきポイント: 評価結果を本人に共有し、強みと改善点を具体的に伝える。
4. まとめ
OJTは、従業員のスキルや知識を実務を通じて育成できる効果的な方法ですが、計画性や担当者のスキルが不足すると形骸化してしまいます。あなたの職場でのOJTの成果を最大化するために、ぜひ本記事の内容を活用してください。
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