人的資本経営とは?定義から導入方法まで完全解説|3P・5Fモデルの活用例も紹介

 

「人的資本経営」とは、人材を企業の重要な資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、企業の中長期的な成長を実現する考え方です。本記事では、人的資本経営の定義、その背景、具体的な導入方法について詳しく解説します。

1. 人的資本経営とは

経済産業省は人的資本経営を次のように定義しています。

人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

引用:経済産業省_人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html

この概念には以下の特徴があります。

参考:経済産業省_持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf

1-1. 人材を「資源」ではなく「資本」として位置付ける

人的資本経営では、人材を効率的に管理し消費する「資源」ではなく、企業成長に寄与する「資本」として捉えています。将来的に価値を生み出す投資対象として、人材の育成や支援を積極的に行います。

1-2. 経営戦略と人材戦略の連動

経営戦略に必要な人材と現状の人材のギャップを定量的に把握し、そのギャップを埋めるために人材育成や採用を行います。これにより、企業全体の戦略目標達成をサポートします。

1-3. 経営陣がイニシアチブをとる

人的資本経営では、人事戦略を人事部門だけに任せず、経営陣が率先してイニシアチブを取ることが求められます。これにより、経営戦略と人事戦略を一体化するため、結果的に人事戦略の推進力を高めることが可能になります。

2. 人的資本経営が注目される背景

人的資本経営が注目される背景には、以下の要因があります。

2-1. 変化対応力の必要性

IT技術の進歩やグローバル化により、企業には迅速かつ柔軟な変化対応力が求められています。このような環境下で競争力を維持するためには、従業員が新たなスキルを習得し、イノベーションを促進できる体制が必要です。

2-2. 個別ニーズへの対応と多様な人材の確保

働き方改革や副業の解禁、多様なライフスタイルへの対応が求められる中で、柔軟性のある働き方を提供することが必要です。また、多様なバックグラウンドを持つ人材を活用することが、企業の競争力向上に直結します。

2-3. 無形資産の重要性の高まり

人的資本や知的財産といった無形資産は、企業価値を構成する主要な要素として、投資家からも注目されています。

3. 人的資本経営導入の3P・5Fモデル

人的資本経営を効果的に導入するためには、経済産業省の「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書」で提案されている「3P・5Fモデル」を活用することが推奨されます。

3-1. 3Pの視点(Perspectives)

  1. 経営戦略と人事戦略の連動
    経営戦略に応じた人事戦略を策定し、実行することが不可欠です。企業ごとに異なるニーズに合わせた戦略の立案が求められます。
  2. As Is – To Beギャップの定量把握
    現状(As Is)と目指すべき姿(To Be)のギャップを把握し、具体的なKPIを設定してPDCAサイクルを回します。人材投資の費用対効果を定量的に把握し、透明性を確保することも重要です。
  3. 企業文化の醸成
    人材戦略の実行を通じて、経営戦略に合致する企業文化を構築します。

3-2. 5Fの要素(Factors)

  1. 動的な人材ポートフォリオ
    現状の人材構成を把握し、必要なスキルや経験を持つ人材を育成・獲得することで、経営戦略に最適なポートフォリオを形成します。
  2. 知のダイバーシティ&インクルージョン
    多様な個人の知識や経験を活用することで、非連続的なイノベーションを創出します。
  3. リスキル・学び直しの推進
    急速な環境変化に対応するために、従業員のスキル向上や学び直しを支援します。
  4. 従業員エンゲージメントの向上
    従業員が働きがいややりがいを感じられる環境を整え、企業理念や経営戦略への共感を深める取り組みが必要です。
  5. 時間にとらわれない働き方
    リモートワークや柔軟な就労環境を提供し、それを支える業務プロセスやマネジメント体制の整備が重要です。

参考:経済産業省_持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 報告書
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf

3-3. 3P・5Fモデルの活用例

自社の人的資本経営の検討の際の3P・5Fモデル」の活用例は以下の通りです。

  1. 現状分析
    まず、自社の人材構成、スキルギャップ、従業員エンゲージメントなどを定量的に分析します。このプロセスは、経営戦略と人材戦略を連動させる第一歩です。
  2. KPIの設定と優先順位付け
    ギャップを埋めるための具体的なKPIを設定し、優先順位を明確にします。例えば、短期的にはスキル不足の分野を補い、中長期的には企業文化を醸成する目標を立てるなど、段階的なアプローチを検討します。
  3. 施策の実施と評価
    リスキルプログラムやエンゲージメント向上施策を実施し、効果を定期的に評価します。この際、透明性を確保し、従業員のフィードバックを積極的に取り入れることが重要です。
  4. 継続的な改善
    PDCAサイクルを回しながら、施策を継続的に改善します。特に、ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、企業文化の進化に寄与するため、長期的な視点で取り組む必要があります。

4. さいごに

人的資本経営の取り組みは、短期的な成果よりも中長期的な視点が重要です。企業価値を最大化するために、人材への投資を積極的に行い、持続的な成長を目指しましょう。

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