ビジネスの現場ではさまざまな振り返り手法が使われていますが、中でもシンプルで効果的なのがKPT法です。このフレームワークを活用することで、チームの成長や課題解決を効率よく進めることができます。この記事では、KPT法の基本からメリット、具体的な進め方まで詳しく解説していきます。
1. KPT法とは:シンプルながら強力な振り返りフレームワーク

KPT法は「Keep(継続すること)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦すること)」の頭文字を取ったフレームワークです。プロジェクトやチーム活動を振り返る際に、この3つの視点から整理することで、効果的な改善につなげる手法として広く活用されています。
1-1. KPT法の基本的な考え方
KPT法は、以下の3つの要素から構成されています。
- Keep:うまくいったこと、良かった点、継続すべきこと
- Problem:うまくいかなかったこと、課題、問題点
- Try:次回チャレンジしたいこと、改善策、新しいアイデア
この3つの視点でプロジェクトやチーム活動を振り返ることで、バランスの取れた分析が可能になります。特に「Keep」から始めることで、ポジティブな雰囲気で振り返りを進められるのが特徴です。
2. KPT法のメリット:なぜ多くの企業がKPT法を採用するのか
KPT法が多くの企業やチームに支持されている理由には、いくつかの明確なメリットがあります。これらを理解することで、自社での導入検討にも役立つでしょう。
2-1. チームコミュニケーションの活性化
KPT法は、チームメンバー全員が参加する形で行うため、普段は発言しづらいメンバーも含めた意見交換の場となります。特に「Keep」から始めることで肯定的な雰囲気が生まれ、「Problem」の議論もスムーズに行えるようになります。
2-2. 問題点の可視化と解決策の具体化
問題を「Problem」として明確に可視化し、それに対する「Try」を設定することで、課題解決のサイクルが回りやすくなります。単に問題を洗い出すだけでなく、次のアクションにつなげる点が大きな特徴です。
2-3. PDCAサイクルの効率化
KPT法は、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)のCheck〜Actionの部分を効率的に回すためのツールとして機能します。定期的にKPT法による振り返りを行うことで、継続的な改善のサイクルが確立されます。
3. KPT法の具体的な進め方:効果的な振り返りのステップ
KPT法を効果的に実施するためには、以下のステップに沿って進めることが重要です。準備から実施、フォローアップまでの流れを見ていきましょう。
- 1. 準備段階
効果的なKPT法の実施には、以下の準備が必要です。
- 参加者全員がKPT法の目的と進め方を理解している
- 振り返りの対象期間を明確にしている(例:過去1ヶ月のプロジェクト)
- ホワイトボードや付箋など、意見を書き出すツールの準備
- ファシリテーター役の設定(特に初めて実施する場合)
- 2. 実施手順
●Keepの洗い出し(15-20分)
・良かった点、継続すべき点を付箋などに書き出す
・一人ずつ発表し、意図を共有する
・似た意見はグルーピングする●Problemの洗い出し(15-20分)
・問題点、課題を付箋などに書き出す
・Keepと同様に発表とグルーピングを行う
・批判ではなく、事実ベースの問題提起を心がける●Tryの設定(20-30分)
・Problemに対応するTryアイテムを考える
・具体的で実行可能なアクションとする
・担当者と期限を設定する(可能であれば) - 振り返り後のフォローアップ
KPT法の効果を最大化するためには、以下のフォローアップが重要です。
- 議論の結果を議事録としてまとめ、共有する
- 設定したTryの進捗状況を定期的に確認する仕組みを作る
- 次回のKPT法実施時に、前回のTryの成果を確認する
4. KPT法の活用シーン:どんな場面で使えるか

KPT法はさまざまなビジネスシーンで活用できる汎用性の高い手法です。代表的な活用シーンをいくつか紹介します。
4-1. プロジェクトの中間・終了時の振り返り
プロジェクトの節目や終了時に実施することで、成功要因と課題を明確にし、次のプロジェクトに活かすことができます。特に長期プロジェクトでは、定期的に実施することで軌道修正が可能になります。
4-2. 定例ミーティングの効率化ツールとして
週次や月次のチームミーティングの一部にKPT法を組み込むことで、単なる報告会ではなく、改善のためのミーティングに変えることができます。
4-3. 1on1面談での活用
上司と部下の1on1ミーティングでKPT法を活用することで、業務の振り返りと次のステップの設定が効率的に行えます。
5. KPT法を成功させるポイント:よくある失敗と回避策
KPT法を効果的に実施するためには、以下のポイントに注意しましょう。
5-1. 建設的な議論の場を作るために
- 批判ではなく事実ベースの議論を心がける
ネガティブな発言や個人攻撃にならないよう、事実に基づいた問題提起を促す。 - 全員が発言できる環境づくり
発言量に偏りが出ないよう、ファシリテーターが全員の参加を促す。
5-2. Tryを具体的なアクションにする工夫
- SMART原則の活用
Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)な目標設定を心がける。 - 優先順位をつける
すべてのProblemに対応するのではなく、重要度・緊急度に応じて優先順位をつける。
5-3. 継続的な改善サイクルを回す仕組み
- 前回のTryの振り返りから始める
次回のKPT法実施時には、前回設定したTryの進捗状況や成果を確認することから始める。 - 定期的な実施スケジュールの設定
月次や四半期ごとなど、定期的な実施スケジュールを設定する。
6. KPT法の具体例:実践的なワークショップの進め方
具体的なKPT法の進め方をイメージできるよう、架空のチームの振り返り例を紹介します。
- Keep(良かった点・継続すること)
・SNSの投稿頻度が上がり、エンゲージメント率が15%向上した
・競合調査レポートの共有により、チーム内の市場理解が深まった
・週次の進捗共有ミーティングが効率的に - Problem(問題点・改善が必要なこと)
・部門間の情報共有が遅れ、キャンペーン準備に影響が出た
・コンテンツ制作の進捗管理が不十分で、納期に遅れが生じた
・クライアントからのフィードバックの反映が不十分 - Try(次回チャレンジすること)
・営業部門との週次情報共有会議を設定する(担当:田中、期限:来週中)
・コンテンツ制作のタスク管理ツールを導入する(担当:佐藤、期限:今月末)
・クライアントフィードバックの一元管理表を作成し、対応状況を可視化する(担当:鈴木、期限:2週間以内) - KPT実施後のアクション例
このKPT法の結果を受けて、チームは以下のアクションを実施しました。
- 翌週から営業部門との定例会議を開始
- コンテンツ管理用のTrelloボードを設定し、全メンバーにトレーニングを実施
- クライアントフィードバック管理表をGoogleスプレッドシートで作成し、週次で更新する仕組みを構築
7. まとめ:KPT法で継続的な成長サイクルを確立する
KPT法は、シンプルながらも強力な振り返りのフレームワークです。「Keep(継続すること)」「Problem(問題点)」「Try(挑戦すること)」の3つの視点で整理することで、チームの強みを活かしながら課題を解決していくことができます。
効果的なKPT法の実施には、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 建設的な議論の場づくりを心がける
- Tryは具体的なアクションとして設定する
- 定期的な実施と前回のTryの振り返りで改善サイクルを回す
KPT法を取り入れることで、チームのパフォーマンスが向上するだけでなく、メンバー間のコミュニケーションも活性化します。ぜひ自社のチームやプロジェクトで実践してみてください。
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