OKRの作り方完全ガイド|ObjectiveとKey Resultの設定・運用ポイントを徹底解説

 

目標管理の新しい手法として注目を集めるOKR(Objectives and Key Results)。Googleやインテルなど多くのグローバル企業で採用されているこの手法は、従来の目標管理制度とは一線を画す特徴を持っています。しかし、「具体的にどうやって作ればいいのか」「日本企業に適した運用方法は何か」といった疑問を持つ担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、OKRの基本概念から具体的な作成方法、運用のコツまで、実践的なポイントを網羅的に解説します。特に日本企業での導入に焦点を当て、失敗しがちなポイントとその対策にも触れています。ぜひ自社のOKR導入・運用にお役立てください。

1. OKRとは何か?基本的な概念と重要性

OKR(Objectives and Key Results)とは、組織やチーム、個人の目標設定と成果測定のためのフレームワークです。「Objective(目標)」は達成したい定性的な目標を示し、「Key Result(成果指標)」はその目標の達成度を測定する定量的な指標を表します。

OKRはGoogle社が成長の原動力として活用したことで広く知られるようになりました。日本企業においても、従来の目標管理制度に代わる新しい手法として注目を集めています。

OKRの最大の特徴は「透明性」と「アライメント(整合性)」にあります。組織全体の目標から部門、チーム、個人へと目標が階層的に展開されることで、全員が同じ方向を向いて進むことができます。また、高い目標にチャレンジすることを奨励する文化を醸成できる点も大きな魅力です。

2. 効果的なOKRを作るための事前準備

効果的なOKRを設定するためには、適切な事前準備が不可欠です。闇雲に目標を設定するのではなく、まずは自社の現状と課題を正確に把握することから始めましょう。このセクションでは、成功するOKR導入のための準備段階について詳しく説明します。

2-1. 組織のビジョンと戦略を明確にする

OKRは組織のビジョンや戦略と密接に関連しています。経営層がどのような方向性を描いているのか、中長期的にどのような組織を目指しているのかを明確にすることが第一歩です。ビジョンや戦略があいまいなまま個別のOKRを設定しても、バラバラな活動になりかねません。

2-2. 現状分析と課題の特定

自社の強みと弱み、市場環境、競合状況などを分析し、現在直面している課題や今後取り組むべき優先事項を特定します。SWOT分析などのフレームワークを活用すると、より体系的に整理できるでしょう。

2-3. 期間の設定

OKRの設定期間(四半期、半期、年間など)を決定します。一般的には四半期ごとの設定が多いですが、自社のビジネスサイクルに合わせて最適な期間を選びましょう。初めて導入する場合は、まず3カ月程度の短い期間でテスト導入することをおすすめします。

3. 理想的なObjective(目標)の設定方法

Objectiveは、「何を達成したいのか」という定性的な目標です。Objectiveは単なる業務目標ではなく、チームの心を動かす「意義ある目標」であるべきです。ここでは、メンバーのモチベーションを高め、組織全体のエネルギーを引き出す魅力的なObjectiveの設定方法について解説します。

3-1. Objectiveの特徴

良いObjectiveは以下の特徴を持っています。

  • 意欲的で挑戦的
    簡単に達成できる目標ではなく、少し背伸びをした目標設定にします。
  • 簡潔で明確
    誰が読んでも理解できる簡潔な表現にします。
  • インパクトのある言葉遣い
    心を動かし、モチベーションを高める表現を心がけます。
  • 将来志向
    現状維持ではなく、成長や変革を促す内容にします。

3-2. Objectiveの作成手順

  1. 組織のビジョンや戦略を確認し、それに沿った目標を考える
  2. 「なぜその目標が重要なのか」を明確にする
  3. チームメンバーとの対話を通じて目標の意義を共有する
  4. 5〜7語程度の簡潔な表現にまとめる
  5. 感情を動かす言葉を選ぶ

3-3. Objectiveの具体例

悪い例:「営業活動を強化する」 良い例:「顧客に感動を提供し市場シェアを拡大する」

悪い例:「新規顧客を獲得する」 良い例:「新市場を開拓し成長軌道に乗せる」

4. 測定可能なKey Result(成果指標)の作り方

Key Resultは、Objectiveの達成度を測定するための定量的な指標です。達成したかどうかが明確に判断できる具体的な数値目標を設定します。このセクションでは、Objectiveの達成度を客観的に評価できる具体的なKey Resultの設定方法について、実例を交えながら詳しく解説します。

4-1. Key Resultの特徴

良いKey Resultは以下の特徴を持っています。

  • 具体的で測定可能
    曖昧さがなく、達成度を数値で測定できる。
  • 挑戦的だが達成可能
    通常の努力では60-70%程度の達成率。
  • 時間的制約がある
    期限が明確に設定されている。
  • 3〜5個程度
    多すぎると焦点がぼやける。

4-2. Key Resultの作成手順

  1. Objectiveの達成を示す最も重要な指標を特定する
  2. その指標の現状値を把握する
  3. 挑戦的だが達成不可能ではない目標値を設定する
  4. 測定方法と頻度を決める
  5. 「〜から〜へ」のように具体的な数値で表現する

4-3. Key Resultの具体例

Objective:「顧客に感動を提供し市場シェアを拡大する」

  • Key Result 1:顧客満足度スコアを75点から90点に向上させる
  • Key Result 2:既存顧客の継続率を85%から95%に高める
  • Key Result 3:新規顧客獲得数を前四半期比で30%増加させる

5. よくある失敗パターンと対策

OKRの導入に失敗する企業は少なくありません。特に日本企業では、独特の組織文化や評価制度との兼ね合いから生じる課題も多いものです。ここでは典型的な失敗パターンとその具体的な対策方法を紹介します。

5-1. トップダウンとボトムアップのバランスが取れていない

OKRは組織全体の方向性を示すトップダウンの側面と、現場の創意工夫を促すボトムアップの側面の両方を持っています。経営層が一方的に押し付けるだけでは現場の当事者意識が育たず、逆に現場任せにすると組織としての一貫性が失われます。

対策

経営層はCompany OKRを明確に示したうえで、部門やチームには一定の裁量を与え、自分たちのOKRを考える機会を設けましょう。すべてのOKRが完全に整合している必要はありませんが、明らかに矛盾するものがないよう注意が必要です。

5-2. 既存の評価制度とリンクさせてしまう

OKRは本来、挑戦的な目標設定を奨励するものですが、評価や報酬と直結させると保守的な目標設定になりがちです。特に日本企業では評価への影響を気にするあまり、チャレンジングな目標を避ける傾向があります。

対策

特に導入初期は評価とは切り離し、「挑戦して70%達成できれば成功」というメッセージを繰り返し伝えましょう。失敗を許容する文化づくりから始めることが重要です。

5-3. 設定して終わりになる

OKRを設定するだけで安心してしまい、その後の進捗確認や振り返りが不十分になるケースは非常に多いです。特に忙しい時期になると、OKRの確認や更新が後回しになりがちです。

対策

週次や月次の定例ミーティングの中にOKRの進捗確認の時間を組み込むなど、継続的に意識する仕組みを作りましょう。また、OKRの進捗状況を可視化するツールを導入することも効果的です。

5-4. Key Resultが活動指標になっている

「セミナーを5回開催する」「顧客訪問を週3回実施する」など、活動そのものを指標にしてしまうケースがよく見られます。これではKey Resultとしては不十分で、活動の結果として生じる成果を測定する指標を設定する必要があります。

対策

「なぜその活動を行うのか」「その先にある成果は何か」を常に問いかけ、アウトプットではなくアウトカムを測定するKey Resultを設定しましょう。

6. OKRの定期的な振り返りと改善方法

OKRは設定して終わりではなく、定期的な振り返りと改善を通じて効果を発揮します。このセクションでは、OKRの進捗を効果的に管理し、組織の学習と成長につなげるための振り返りの手法について解説します。

6-1. 週次・月次の進捗確認

OKRの達成に向けた進捗を週次や月次で確認します。特に週次ミーティングでは、「先週何をしたか」「今週何をするか」「障害となっていることは何か」を共有し、チーム全体で状況認識を合わせることが重要です。

6-2. 中間レビュー

四半期や半期のOKRサイクルの場合、中間地点でレビューを行うことをおすすめします。達成度合いを確認し、必要に応じて軌道修正を行います。環境変化や前提条件の変更によってOKR自体を見直す必要がある場合もあります。

6-3. 期末の振り返り

OKRの期間終了時には、達成度を評価するとともに、以下のような視点で振り返りを行います。

  • 各Key Resultの達成率は何%か
  • 達成できた要因・できなかった要因は何か
  • チームの協力体制は機能したか
  • OKRの設定自体は適切だったか
  • 次期に活かせる学びは何か

これらの振り返りを通じて、OKRの設定や運用プロセスを継続的に改善していくことが大切です。

7. まとめ:効果的なOKR作成の7つのポイント

OKRの作り方について詳しく解説してきましたが、最後にポイントをまとめます。

  1. 組織のビジョンと戦略に基づいてOKRを設定する
    孤立した目標ではなく、組織全体の方向性に沿ったOKRを設定しましょう。
  2. チャレンジングな目標を設定する
    確実に達成できる目標ではなく、少し背伸びをした目標を設定しましょう。
  3. Objectiveは心を動かす表現で
    単なる業務内容ではなく、チームのモチベーションを高める表現を心がけましょう。
  4. Key Resultは必ず測定可能な形で
    達成したかどうかが明確に判断できる具体的な数値目標を設定しましょう。
  5. OKRの数は絞り込む
    1つのObjectiveに対して3〜5個のKey Result、組織やチーム全体でも2〜3個のObjectiveに絞ることをおすすめします。
  6. 定期的な振り返りと対話の機会を設ける
    OKRの進捗を定期的に確認し、チーム内で共有・議論する場を設けましょう。
  7. 形式にこだわりすぎず、自社に合った形で運用する
    OKRのフレームワークを理解したうえで、自社の文化や状況に合わせてカスタマイズすることが成功の鍵です。

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