本記事では、定着率の定義や計算方法、離職率との違い、日本企業の実態、定着率が低いことによるデメリット、そして定着率を向上させるための具体的な施策について詳しく解説します。
1. 定着率とは?

定着率とは、企業に一定期間在籍する従業員の割合を示す指標です。一般的には、新入社員が入社してから一定期間(例えば3年)後にどれだけの社員が残っているかを計測します。定着率が高いほど、従業員が長期間働き続けていることを意味し、企業の安定性や成長に大きく貢献します。
厚生労働省の『令和4年雇用動向調査結果の概況』によると、日本企業の平均離職率は 15.0% であり、そこから算出される平均定着率は 85.0% と推定されます。(出典:厚生労働省)
1-1. 定着率の計算式
定着率を計算するためには、以下の式を用います。
定着率(%) = (一定期間後の在籍従業員数 ÷ 一定期間前の在籍従業員数) × 100
例えば、新入社員100人が入社し、3年後に80人が残っていた場合、定着率は 80% となります。
2. 離職率と定着率の違い
離職率は、一定期間内に退職した社員の割合を示す指標です。一方、定着率は、一定期間内にどれだけの社員が継続勤務しているかを示します。
- 離職率が高い = 退職する人が多い
- 定着率が高い = 企業に残る人が多い
2-1. 離職率の計算式
離職率を計算するためには、以下の式を用います。
離職率(% )= (一定期間内の退職者数 ÷ 一定期間前の在籍従業員数) × 100
例えば、1年間で100人の社員のうち15人が退職した場合、離職率は 15% となります。
3. 日本企業の離職率の平均
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、日本企業の平均離職率は 15.0% とされています。(出典:厚生労働省)
また、業界別の離職率を見ると、以下のような傾向があります。

このように、業界ごとに離職率が大きく異なるため、自社の属する業界平均と比較することが重要です。
4. 定着率が悪いことにより発生するコスト
定着率が低いと、企業は以下のようなコストを負担することになります。これらのコストは、単に金銭的な負担にとどまらず、企業の組織文化や成長戦略にも大きな影響を与えます。

4-1. 採用コスト
新しい人材を採用するためには、求人広告費、人材紹介会社への手数料、面接にかかる時間といったコストが発生します。定着率が低い企業では、頻繁な採用活動が必要となり、結果的にコストが膨らみます。
5-2. 教育・研修コスト
新入社員が業務に適応するまでには、研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が必要です。教育にかかる時間や指導者の労力も企業にとってはコストとなります。
5-3. 業務の生産性低下
定着率が低い企業では、業務の引き継ぎが頻繁に発生し、社員の生産性が低下する傾向にあります。新しい社員が業務に慣れるまでの期間も考慮する必要があります。
5-4. 組織の士気低下
離職が相次ぐと、社内の雰囲気が悪化し、社員のモチベーションが低下することがあります。結果的に、残った社員の負担が増加し、さらなる離職を招く悪循環が生じる可能性があります。
5. 定着率を改善するステップ

定着率を向上させるためには、企業全体で取り組むべき具体的なステップが存在します。以下のプロセスを通じて、社員の満足度を高め、長く働き続けてもらう環境を整えることが可能です。
5-1. 現状分析を行う
まずは、自社の定着率や離職率を数値で把握し、どの部門や職種で特に定着率が低いのかを分析します。また、業界平均と比較しながら、どのような要因が影響しているのかを明確にすることが重要です。
5-2. 社員の声を聞く
定着率向上には、社員の意見を積極的に取り入れることが不可欠です。アンケートや面談を実施し、社員が感じている課題や不満点を把握しましょう。キャリアパスの不透明さ、給与・福利厚生の不満、ワークライフバランスの問題など、具体的な要因を特定することが重要です。
5-3. 改善施策を実行する
社員の声を反映し、具体的な改善策を実施します。たとえば、以下のような施策が有効です。
- キャリアパスの明確化:昇進やスキルアップの道筋を示し、社員の成長を支援する。
- 柔軟な働き方の導入:リモートワークやフレックスタイム制を取り入れ、ワークライフバランスを向上させる。
- 評価制度の整備:公平で納得感のある評価・報酬制度を整え、社員のモチベーションを高める。
- エンゲージメント向上の施策:社内イベントの実施や、1on1ミーティングの充実を図る。
5-4. 継続的なモニタリング
改善施策を実施した後も、定期的に社員の満足度調査を行い、施策の効果を確認します。問題が解決されていない場合は、さらなる改善策を検討し、より良い職場環境を目指しましょう。
まとめ
定着率の向上は、企業の成長と安定性を確保するために不可欠です。定着率が低いと、採用・研修コストが増加し、業務の生産性が低下し、組織全体の士気も下がります。しかし、適切な施策を講じることで、社員が安心して働き続けられる環境を作ることができます。
社員の定着率向上には、適切な教育や研修も重要な役割を果たします。スキルアップの機会を提供することで、社員の成長意欲を高め、職場への満足度を向上させることができます。
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