営業力を高める鍵は、顧客のニーズを的確に引き出し、最適な解決策を提案するスキルにあります。そんな営業手法の一つとして、世界中の企業で採用されているのが「SPIN話法」です。本記事では、SPIN話法の基本的な概念、効果的な活用方法、そして注意点や適さない場面について詳しく解説します。営業力をさらに高めたい方は必見の内容です。
1. SPIN話法とは
SPIN話法とは、イギリスの心理学者ニール・ラッカム氏が提唱した、営業における質問手法です。この方法では、以下の4つの質問を用い、顧客が自身の課題やニーズに気付くことを促します。
・状況質問(Situation Questions)
・問題質問(Problem Questions)
・示唆質問(Implication Questions)
・解決質問(Need-Payoff Questions)
4つの質問の頭文字を取ってSPIN話法と呼ばれ、IBMやマイクロソフトといった企業の営業活動にも採用されています。特に複雑な商談や高額商材を扱う際に効果を発揮し、日本ではSaaS商材を扱うIT企業を中心に利用されています。
1-1. SPIN話法の目的
SPIN話法は顧客との対話を通して信頼関係を構築しながら、顧客が自社の課題やニーズを自ら認識することを目的としています。これにより、営業担当者は顧客に深く寄り添った提案を行うことができ、結果的に受注率の向上に繋がります。商品の特徴を強く伝えるハードセール手法と異なり、顧客本位の提案が可能です。
1-2. SPIN話法の4つの要素
顧客が自らの課題やニーズに気付くプロセスを支える4つの質問を以下に解説します。
1. 状況質問(Situation Questions)
顧客の現状や環境を把握するための質問です。例えば、顧客の業務プロセスや使用しているツール、組織構造など、顧客の背景や状況を理解するための質問を行います。
▼状況質問の例
・どのようなツールを利用していますか?
・現在の業務での課題はどのようなものがありますか?
・〇〇様の部署のミッションはどのようなものでしょうか?
2. 問題質問(Problem Questions)
顧客が抱える課題を明確にするための質問です。問題質問は顧客から具体的な課題を引き出すために、はい・いいえ、で答えることができるクローズド・クエスション形式で設計されることが多いです。
▼状況質問の例
・属人化により新人育成がうまくできないなどございませんか?
・使用しているツールに不満や不安はありませんか?
3. 示唆質問(Implication Questions)
示唆質問は顧客が抱える課題の深刻さや影響を顧客に認識させるための質問です。この質問を通じて、顧客が自ら課題の深刻さを認識することにより、解決策導入の必要性が高くなります。
▼示唆質問の例
・現状の課題が解決されない場合、どのような影響が発生しますか?
・現状の課題が解決しないと、コストはどれくらいかかりますか?
4. 解決質問(Need-Payoff Questions)
解決質問は顧客が抱える課題を解決した際に得られる利益を認識してもらうための質問です。この質問を行うことで、顧客は解決策の価値を自ら認識し購買意欲の高まりに繋がります。
▼解決質問の例
・この課題を解決することで、どのくらいのコスト削減が期待できますか?
・作業時間を短縮できると、その時間をどのような業務にあてることができますか?
以上のような4つの質問を順に行うことにより、顧客が自らの課題やニーズに気付くことを促します。
2. SPIN話法を用いた商談の流れの例
ここではSPIN話法を用いた顧客と営業担当の商談の流れの例をご紹介します。
こんにちは、田中様。お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございます。本日は御社の人材育成についてお話を伺えればと思います。
人材育成は確かに課題の一つですね。最近は新入社員の教育に力を入れているところです。
営業担当者: 新入社員の教育に注力されているのですね。具体的にどのような教育プログラムを実施されているのでしょうか?(状況質問)
そうですね。基本的なビジネスマナーや業務の基礎知識については座学で行い、その後はOJTで先輩社員について実務を学ぶ形式です。ただ、教える側の社員の負担が大きくなってきています。
なるほど。教える側の負担が大きいとのことですが、具体的にどのような支障が出ていますか?(問題質問)
ベテラン社員が教育に時間を取られ、本来の業務に支障が出始めています。また、教え方にも個人差があり、新入社員の成長にばらつきが出てきているんです。
この状況が続くと、今後どのような影響が考えられますか?(示唆質問)
そうですね…ベテラン社員の疲弊度が増して、離職リスクも高まりますし、新入社員の戦力化も遅れてしまいます。結果として会社全体の生産性低下につながりかねません。
もし効率的な教育システムがあれば、どのようなメリットがありそうですか?(解決質問)
ベテラン社員の負担を減らせますし、教育の品質も均一化できそうですね。新入社員の成長も早まり、会社全体の生産性向上も期待できます。
ありがとうございます。実は弊社では、ベテラン社員の暗黙知をデジタル化し、効率的な教育を実現するeラーニングシステムを提供しております。御社の課題解決にお役立てできると思いますので、詳しくご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?
3. SPIN話法を行う上での注意点
以上のように、SPIN話法は効率的な営業を実現するために非常に有効です。一方で、いくつか注意すべきポイントもあります。ここでは、SPIN話法を行う際の注意点をご紹介します。
3-1. 事前準備を行う
HPや決算資料に記載されている情報や的外れな内容についてヒアリングしてしまうと良い関係構築ができません。そのため、できる限り事前に相手企業をリサーチし事前準備を行っておくことが大切です。
3-2. 質問の順序を意識する
状況質問から始まり、解決質問に収束するというSPINの流れを守ることで、顧客が自らの課題やニーズに気付くことができます。質問の順序が崩れると、顧客が混乱したり不信感を頂く原因になるため、SPINの順序を守ることが重要となります。
3-3. 自分の意見を押し付けない
無理に話を進めると、信頼関係が損なわれる可能性があります。そのため、自分の意見を押し付けず、焦らず丁寧に話を進めることが大切です。
4. SPIN話法が適さない営業シーン
様々な営業シーンで効果的なSPIN話法ですが、特定の状況ではうまく機能しない場合もあります。ここではそんなSPIN話法が適さない営業シーンをご紹介します。
4-1. 顧客のニーズが明確な場合
顧客が自身のニーズをすでに知っている場合、状況質問や問題質問は回りくどく感じ逆効果になるケースがあります。このような場合、ニーズに沿った直接的な提案が適切です。
4-2. 商談時間が短い場合
SPIN話法は質問を重ねて自らニーズや課題を認識させるため、コミュニケーションが多くなり商談時間が長くなります。そのため、商談時間が短い場合は、端的な提案が必要です。
4-3. 顧客が情報を十分に持っている場合
顧客が比較検討段階で十分に情報収集を行っているフェーズでは、状況質問や問題質問を行うことで顧客が不快に感じる可能性があります。
4-4. 単純な製品やサービスの商談
顧客がすぐに理解できる製品の場合、SPIN話法の複雑な質問は顧客にとって煩わしさを感じることがあります。
以上のように状況や取り扱いサービスによっては、SPIN話法が適さない場合があります。
5. SPIN話法を取得する方法
ここではSPIN話法を取得する方法を記載します。
5-1. 書籍を読む
SPIN話法を学ぶために一番手軽な方法です。特にニール・ラッカム氏が執筆した『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』がおすすめです。
5-2. 社内セミナーを開催する
社内セミナーを開催し、SPIN話法を知っている社員や実際にSPIN話法を商談時に使っている社員に講師をしてもらう方法です。特に実際に営業でSPIN話法を使っている社員の場合、より実践的なSPIN話法を学ぶことができるでしょう。
5-3. 専門的なトレーニングを受ける
SPIN話法はその取得が難しい点がデメリットです。そのため、研修費用などに余裕があれば、外部の専門家を招き専門的なトレーニングを行うことでSPIN話法を身につけることがおすすめです
▼SPIN話法を学ぶおすすめの研修
営業担当者のための「売れ続けるしくみ作り」研修~「顧客ニーズ」と「顧客視点」を知り、「コンサルティングセールス」の実践へ~
5.さいごに
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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